彼は実によく耐えたのだと賞賛にも値する。
理屈は分かる。
さすがに応えるべきだとも頭では分かるけど。
けど・・・。
「・・・っ・・・ま、まだ、・・・裸とか無理っ!!」
全力でそう声を響かせて彼の胸を押し返した。
さすがに強引な攻め姿勢が止んで、ゆっくりと体の距離を離した彼が見下ろして。
てっきり非難の言葉でも振ってくるかと思った。
なのに・・・。
この男・・・。
どうやら本当に限界だったらしい。
「・・・・・服着たままでも出来るし」
「・・・・・・」
「手袋したままでもいいし、」
「・・・・・・・そこまでする程限界なんですか?」
「限界にさせたのは千麻ちゃんのキスです」
「・・・・・・・・発情期、」
「・・・・・・恐いなら部屋暗くして更に目瞑っててもいいから」
だから・・・ね?
そんな風に懇願に揺れる緑に酷く戸惑って躊躇って結果・・・・。
「・・・・出直し」
「・・・・・・」
「って・・言ったら・・・私嫌な女じゃないですか・・・」
不本意だと眉を顰めて非難するように告げたのに、言葉の含みは拒絶でないが為に彼の熱烈なキスを落とされる結果となる。
不安はある。
それによる動悸も徐々に強まっているのに、魔法効果。
あと努力賞。
何より・・・・もしこれにも効果的であるのなら、魔法のきいて麻痺している間に私も彼を受け入れてみたいと思ったのだ。
遠回しな了承を得ると今まで強引だったくせに心底安堵したように微笑む姿。
その表情だけで困るほど私への愛着を示してくるから変に戸惑ってしまう。
おかしい。
何だか少し・・・・。
羞恥心が疼く。
自慢とは違うけれど、私は結構貪欲だけどもドライな方だったはずで。
恭司とセフレな逢瀬を不定期に繰り返した時に、久しぶりの時間であってもこんな風に羞恥心が疼いた事なんてない。
裸を見られる羞恥心なんてその後の行為ほど大きい物でもないし、まして初めての行為でもない関係にそれを感じることもない。
筈・・・だったのに。
「・・・千麻・・・」
「っ・・・」
愛おしい。
そういう様な声の響きで名前を呼んだ唇が首筋を滑って、どこに印を残そうかと悪戯に這う。
その感触には慣れている。
でも、以前はなかった感触に思わず体がざわついて心臓が苦しい。