私は案外、大人びない彼が好きだと思う。


こうして拗ねてむくれて、子供みたいに笑って悲しんで。


自分がなかなか出来ない感情表現をくるくると苦もなく見せる姿に尊敬すらする。


あまりに反応が明確だから、こうしたらどうだろう?なんて好奇心すら沸いて。


思わず彼が反応せずにいられない態度や言動を返してしまう。


でも、その中でも、


落として落として、上げた時の彼のしてやられた顔が一番好き。



「好きな子は苛めたい」



明確にはせず含みありにそう声を響かせれば、自分とは言われてないのに期待したグリーンアイがフードの裾から隠れる様に私を見つめる。


それでも無言は彼の小さなプライド。


だから、更にそれを打ち崩す様に言葉を重ねるのだ。



「私は滅多に誰かの為に容姿を変えたりしないんですよ?」



ほら・・・、


崩壊。



「っ・・・狡い。小悪魔!!可愛いしっ!!」


「・・・怒ってるんですか?褒めてるんですか?」


「可愛いすぎて怒ってます」




照れ隠しなのか口調ばかりは不満に響かせ、意味合いは惚気を口走る彼が、『可愛い』と言いながら両頬を包みこんできて。


軽く笑ってグリーンアイに視線を固定すると、ほのかに紅潮した彼がゆっくり顔を傾け近づけてくる。


まぁ、そんな流れよね。


必然と言われればそんな気もして、それでも私の指先がそれを阻んだのも彼と私の現在の自然な流れ。


絡んだグリーンの不愉快な事。


でも仕方ないと彼もどこかで思っているから視線で留めて諦めるのだ。


その繰り返し。


焦らしているのか?と問われればそれも言える。


でも、それが建前と言えばそれも正解。


本音を言えば・・・・・キスしてもいいと思っている。


むしろしたいと思う事の方が多くて、それでも出来ないのは・・・。


少し怖いのだ。


・・・・まだ。


関係を修復してみてもなかなか進まないリハビリにいつか彼が疲れて離れてしまわないかと不安になる。


今もそんな気持ちをひた隠して、ただの意地悪であるかのようにニッと笑って見せたのに。



「・・・・・千麻ちゃんは隠したいことがある時ほどよく笑う」


「・・・・・」


「恐がってもいいんだよ?俺もへこむけど・・・でも、恐がってでもその瞬間に傷ついても小さく前進する」



純粋で真剣な緑が私を覗き込んでそう説いて、黒い手袋に覆われた指先が私の頬をくすぐった。