「・・・・ってかね、」


「はい、」


「また一緒に暮らそうよ」


「・・・・」


「俺の部屋に・・・・戻って来てよ・・・・」



どこか寂しげに響いた懇願が終えると、必然の様にゆっくりとその顔を寄せられた。


近づく距離に動揺したり逃げ出すでもなく留まって、今にも触れそうなところまで寄ったタイミングにスッと指先を滑り込ませて口の端を上げる。



「・・・・出直し」


「・・っ・・・なんで!?」


「まだ一緒に暮らせるほどリハビリが進んでないからです」


「こうもガードされたらリハビリも何もないじゃんかっ!」


「・・っ・・・」


「・・・・・ごめん。・・・・分かってる」



一瞬本音の孕んだ彼の反応に、思わず押し黙って困ったように見つめてしまった。


言った彼も直後に動揺露わな視線を絡め、ゆっくり息を吐くと謝罪と理解。


それでもきっと弾いた言葉は本心であると痛い程分かり、心の隙間が空きそうな瞬間に不安を感じてのそりと彼の前にその身を移動させると向かい合う様に座ってみる。


彼もやはり訂正の聞かない発言に気まずく感じているらしく、ちらりちらりと時々視線は絡めるけれど顔の向きは私に向ききらない。


そんな彼に困ったように口の端を上げると、スッと両手を伸ばして彼のフードに触れていく。


体重を移動しながら膝立になって、彼を見下ろすようにフードを後ろに流して外した。


どういう意図かと動揺に揺れるグリーンアイがようやく私をまっすぐに捉えて見上げてきて。


彼の髪の感触を確かめるように指先で撫で、そのまま頬まで下すとまっすぐに見つめ返した。



「・・・・・嫌いになりますか?」


「なる筈ない。・・・ごめん、俺の我慢が足りない」



そう言って自分に呆れるように笑う彼に、自分も口の端をあげて額を寄せた。


額に彼の髪が触れる。


私の結び落とした髪も彼の頬をくすぐって、それのせいなのか目を細めた彼をクスリと笑う。



「髪、伸びたよね」


「放置してましたから」


「そこは俺の為って言ってよ」


「・・・あなたを意識して髪型を選ぶなら、今すぐバッサリ切り落とします」


「何で!?」


「そう、この悔しがる反応に優越するというか、」


「っ・・・S・・・」


ほら、その顔よ。


と、寄っている眉根を指先でなぞると更に悔しそうな彼がフードに手をかけバサリと被り直した。


すっぽりと目元まで隠した行動に子供っぽいと思っても悪印象はない。