そんな瞬間にそっと近づいた存在が肩に頭を預けると、じゃれつく様に髪の上から首筋にすり寄って。


頬に彼の髪とフードが霞め、トレーナーから覗く太腿にそっと手袋の質感が与えられる。


相も変わらず発情期。


そんな事を思って、どうしたものかと思案していれば。


やっとその身を起こしたばかりのベッドに再度柔らかく押し倒されシーツに髪の毛が無造作に広がった。


その散らばった毛先を見つめ、『ああ、だいぶ伸びたな』なんて、されている行為に意識をお留守にしていれば、



「・・・・千麻ちゃん・・・お願いだから無視しないで」


「いや、いつまで無意味な挑戦を続けるのかと、」


「無意味って言っちゃう!?」


「じゃあ・・・出直し」


「っ・・・・・、千麻ちゃん酷い・・・」



さらりとその気はないと告げれば前者の通りに無意味になる彼の行為。


見事消沈した姿を押し退けるとベッドから降りて、髪に手櫛を通しながらクローゼットの扉を開けた。


中から適当に服を選んで袖を通し髪の毛を纏め上げると彼を振り返る。


未だにベッドの上でいじけて背中を向けている姿に小さく笑うとすぐに口の端を戻していく。


そしてそっと足音消してその姿に近づくと一気に後ろから飛びついて腕を巻きつけた。



「っーーーうわっ!?ちょっ、何ーーーーーー!?」


「・・・・なんか・・・背中の哀愁に愛着沸いて驚かしたくなったというか、」


「・・・相変わらずマイペース・・・俺が迫るのは拒むのに、自分が触りたいときは積極的に触ってくるんだから。・・・・しかも・・・・・・めっちゃ可愛らしく・・・」


「・・・・ご不満なら配慮して控えますが?」


「いや、ご不満じゃないです。むしろ歓迎なんだけどその先に進みたくてウズウズするっていうか・・・・」


言いながら彼が顔の向きを変えて私が顎を乗せている方に振り返って視線を絡める。


至近距離のグリーンアイに一瞬は緊張したけれど強張ったりはしない。


まっすぐに見つめ返して『何が言いたいのかわからない』と言いたげに首を傾げると。


もどかしそうな顔をした彼がようやくその唇を動かし声を響かせた。