「・・っ・・・・茜!!」
雛華の焦る声が耳を掠めた。
でもただ音として流して、閉じていた目蓋を開いた時には激情。
衝動的に感情的に・・・・理性の不在。
彼女の心情なんて考える事の皆無。
勢い任せに扉を開けて入りこめばベッドの上でぼんやりとしている彼女を捉えて。
フッとあげた視線と絡んだ瞬間に愛しさからの憎悪。
「・・・・せーー」
「何でっーーー何で千麻ちゃんは俺に嘘ついて黙って隠すんだよ!!何でっ・・・大事なことほどっーーー俺は後回し?!」
「茜っ・・落ちつけってーーー」
雛華が背後から俺を押さえこんでの牽制。
それでも自由だった口は何よりも鋭い痛みを吐きだして。
ああ、いっそ・・・・、
コレを言ってしまう前に殺してほしかったと思うほど・・・・。
言った後の・・・・今も続く後悔。
「どうせ愛してない俺の子だから堕ろそうと思って黙ってたの!?こんな風に流れなくてもーーー」
「茜っ!!千麻ちゃんはまだ知らないんだっーーー」
何で・・・・・・・忘れてたのかな・・・俺。
あの日・・・。
妊娠してなかった。って・・・・俺の前で本気で泣いてくれた千麻ちゃんの事。
俺の声が響いて、雛華の声が響いて・・・・・静寂。
ぼんやりと俺を見つめていた彼女の眼から静かに一筋涙が落ちた。
その瞬間に、
一気に冷静さの回復。
遅すぎた・・・・・それ。
目の前の彼女が視線を泳がせて、徐々に状況を取り込んでいく様に心底怯える。
そして・・・・自分が今ほど彼女に突き立てた言葉にも。
「・・・・・っ・・・はぁっ・・・えっ?」
「・・・千麻ちゃーーー」
「待って・・・・・待って・・・・待ってぇ・・・・」
彼女が懇願するように消え入りそうな声で背中を丸める。
そうして・・・確かめるように触れた・・・、
もう・・・・何もない腹部。
「・・・・・・・・・いない・・・の?」
「・・・っ・・」
否定を求めて俺を見た眼に怯んだ。
そんな筈ない。
嘘・・・。
そんな儚いと分かっている希望を俺に求めた姿に言葉を返せず。
無言の・・・・肯定。