どうやって・・・・・移動したんだっけ?
記憶が無い。
ただ、断片的に捉えた木とか建物とかは覚えていて。
あとは・・・・・痛いくらい騒いだ自分の心臓。
意味が分からなかった。
慌てた様子の雛華が細かい説明なしに彼女が倒れた。と電話してきて。
それも相当な取り乱し方から軽い貧血とか体調不良ではない事が分かって。
ワケが分からないまま言われた病院に走る。
そうして大きい総合病院の入り口をくぐって受付で事情を説明し案内されて。
長くて消毒液臭いローカを進めば、
茫然としてローカに立つ雛華を捉えた。
瞬時に恐いと感じた。
生気を抜かれたようにただ・・・目の前の処置室の扉を見つめて立つ姿が恐いと。
「・・・・・雛華・・」
意を決して声をかければ音に反応してゆっくりとこちらを振り返った雛華の眼が俺を捉えて。
でも、映しているのに映していない様にも感じて。
早く事情が聞きたいのに口が動かない。
「・・・・・・・・茜・・・・・」
あっ・・・・泣きそうだ。
そう感じた響きに一瞬最悪な事態を想像して心臓が痛いくらいに跳ねて・・・弾かれた。
一瞬で移動したように雛華に詰め寄って肩を掴む。
その瞬間に雛華の表情が崩れて・・・。
「・・・・・千麻ちゃんは・・・大丈夫、今目を覚ましたばっかで・・・・処置後だったから意識が朦朧としてて・・・もうすぐ先生がくる・・・・」
結果、彼女は問題ないと言う話なのに・・・。
何で・・・・・・不安の継続?
助かった報告にしてはどんどん沈む雛華に意味が分からず困惑する。
何がどういう事なのかと確認しようと口を開きかけた瞬間。
「・・っ・・・・子供は・・・・・ダメだった・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・流れた・・って・・・・・」
なぁ・・・、
だから・・・・
意味が・・・分からないんだよ・・・雛華。
だって・・・・・・・そんな話・・・・・聞いてない。
「・・・・・・・・子供って・・・何?」
響かせた言葉に雛華がようやく顔を上げた。
そして捉えるのは驚愕と失敗。
戸惑い見せての間の後。
「・・・・・・・・聞いて・・・・ないの?」
その言葉を聞いた瞬間に・・・・崩壊。
目蓋が降りてきつくきつく闇を下ろす。
そうして耐えようとしたのに・・・・・無理だった。
知らなかったから。
悲しみより早く・・・・。
絶望。
ねぇ、どうして?
いつだって俺が最後に知るの?
愛してくれてなかった?