「・・・・千麻ちゃん、」



心底驚いているグリーンアイに見つめられる。


そんな彼に説明をしたいのに何をどう語ればいいのか分からず、ただその癒すような緑を見た瞬間に崩れた。


はた迷惑にも玄関先に座り込んで蹲ればさすがに不動ではいられなかった彼に引き起こされ中に誘導される。



「とにかく中入って。そこ冷たいし体冷やしたらダメだって」


「・・っ・・・雛華・・さ・・・」


「チッ・・・・・馬鹿茜・・・忠告したのに・・・・・」



彼に悪態をつきながら私を支えて家に上げる雛華さんにただ身を任してふらふらと歩く。


つい数時間前にも身を置いた部屋に連れて行かれ、入った瞬間に暖かいと感じた。


そして気がつく。


自分の体が恐ろしい程冷えていた事に。


そんな私に雛華さんが毛布を片手に近づいてきて、目の前で広げるとぐるりと包み込んでその場に座らせた。



「きゅ・・急に来て・・・すみま・・・」


「千麻ちゃんならいつでも大歓迎。でも・・・こんな風にボロボロで来られたら焦る」


「すみ・・・ません・・・」


「謝らなくていいって・・・」



言いながら私の背中を摩って、気がついたように離れると炬燵の横にあるお茶のセットを用意し始める。


手早く準備して湯気の立つお茶を湯呑に注ぐと私の前に差し出して、それに手を伸ばして気がついた。


驚くほど・・・手が震えてる。




「・・・・茜の馬鹿・・・・何言った?」


「・・・・・」



問われた事に首を横に振った。


言うつもりはなかった。


言ったら・・・・彼一人を悪者にしてしまいそうで。


私も同じくらい酷い事を言った筈なんだ。


あの喧嘩は・・・・手負いの獣同士の虚勢。


お互いにもう本当にぎりぎりだからこそ冷静な判断で言葉を選べなくて、感情のままに相手が一番傷つく術を取ってしまう。


そうしないと自分が先に傷ついてしまいそうで・・・。


好きなのに・・・・おかしい。



「・・・・・どうしよう・・・」


「何?」


「結婚・・・・・しなきゃよかったって・・・・言ってしまった・・・・」


「・・・・」


「彼との時間・・・・・否定してしまった・・・・」



そうただ一つ強く強く感じた懺悔を口にしてきつく目を閉じた。


あふれ出る涙が冷えた頬に熱く感じる。