「何それ・・・嘘ついたのは千麻ちゃんなのに、俺の為とか名打って嘘ついた罪悪感はなしにするの?」
「だって、実際に私は彼と後ろめたい事なんてないんです」
「よく言うよ、この前俺をのけ者に勝手に裏で相談して別れようとしたくせに」
「なんて被害妄想・・・、『別れよう』なんて言ってません!離れて考える時間が欲しいと言ったんです」
「で?離れてその間あの嫌味な元カレに相談乗るつもりだった?」
「馬鹿馬鹿しい!単なる子供じみた嫉妬じゃないですか!?」
「悪いね、これでも千麻ちゃんより5年も後に産まれてるお子様だから俺」
「っ・・・本当・・・ガキ。よっぽど・・・雛華さんの方が大人だわ・・・・」
子供で低能。
幼稚で無駄。
そう判断した瞬間に対比する存在を持ち上げて口にしたのは私のミス。
しかも雛華さんを。
一瞬グリーンアイが怯んだ気がしたでも彼も彼で負けず嫌いの感情的な男なのだ。
「やっぱり・・・千麻ちゃんは俺より雛華を評価するんだよ。そりゃあそうだよね。俺とは違って?本当に恋愛感情で好きだったんだから・・・」
「・・・・どういう意味ですか?」
「・・・・」
「私が・・・・今も彼を好きだと?浮気でもしてるとでも?」
「どうだか・・・」
「・・っ・・・つまりっ、あなたは私のあなたへの気持ちを疑っているって事ですか!?」
気がつけば彼のデスクに手をついて、詰め寄るように身を乗り出していた。
視線下のグリーンアイが動揺に揺れる。
でも私も揺れる・・・激しく・・・、大きく・・・・。
感情的になって喚いた体が呼吸を荒くして、フッと正気になれば酸欠で倒れそうだ。
貧血。
ああ・・・・・・・こんな事・・・・お腹の子に悪いのに。
そして感じる異の不快感に眉根を寄せる。
でも・・・堪える。
涙も・・・・。
「・・・・・・仕事でも・・・私生活でも・・・、疑われるような行動を取った方が悪いんだよ・・・・」
ああ・・・・・。
そう、
あなたは・・・負けず嫌いのお坊ちゃまだから。
だから・・・・分かってます。
分かってるんです。
苦し紛れにも似た正論を咄嗟にぶつけたって。
でも・・・・、でも・・・・、
「・・・っ・・・・・ふぅっ・・・・」
「・・っ・・・」
「私への・・・・・信頼が薄いって・・・よく分かりました」
「・・っ・・・千麻ちゃーーー」
「体調不良ーーーー」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・早退の・・理由にしておいてください」
「・・ちょっ・・・ねぇ・・」
「ああ、きっと・・・・・・・あなたは信用しないんでしょうけど・・・」
ニッと口の端を上げて微笑んでみる。
皮肉に全力で恨みを込めて。