「嘘つき・・・」


「・・・・」


「千麻ちゃんが簡単に後ろめたさもなく俺に嘘つく人だってよくわかったよ」


「・・っ・・なっ・・」


「こうなってくると雛華のところで体調不良も疑わしい」


「何の事ですか!?私が一体何のーーー」


「へぇ、記憶にないんだ?どこかいい病院でも紹介しましょうか?たった数十分前の記憶だよ!千麻ちゃんとその元カレが仲良さそうに会社の玄関口で話してたのはさっ」


「・・っ・・・・」


「・・・・・・ほら、・・・やっぱり・・嘘つきだ」



しまった。


そう思った。


そう思って崩した表情が彼の表情も歪め、その瞬間に彼の失意を捉えてここに来て初めて心が怯む。


見られていたなんて。


ただでさえこの人には逆鱗だったというのに、接触あったことを秘めて、その秘め事をしっかり確認され今誤解された。


変な汗が出る。


動悸が・・・激しい。


目の前の椅子に頭を抱えて苦悶の表情の彼を捉えて。



「・・・・・・違うんです」


「・・・・何が?」


「・・っ・・・彼とは・・本当に偶然玄関で会ってそれで・・・」


「ねぇ・・・・それ、今信憑性あると思う?今まさに嘘ついてた千麻ちゃんがいくら弁明してもさ・・・100%信じ切れるものじゃないよ」


「・・・・・・・でも・・・本当です」


「・・・・・どう信じろっての?そもそも・・・そうやって会っただけって言うなら・・・別に俺に隠す事ないじゃん。・・・時間工作までしてそんなに俺に見つかりたくなかった?」


「・・っ・・・見つかりたくなかったですよ!!」


「っ・・・」


「見つかっても、正直に言っても・・・結局こんな風に私を責めるのがあなたじゃないですか!」



そう、内容や状況なんて関係なくて、ただ彼といるという事が怒りの対象であって。


私にどんな後ろめたいことが無かろうが一緒にいたというだけでこの人にとっては犯罪にも値するんだ。


そして傷つく。


だからこそ、傷ついた姿を見たくないからこそ隠したのに。


感情的になって肯定し、彼の私に対する姿勢を責める。


言われた瞬間は驚愕し不動になっていた姿がゆるゆると攻撃性を引き戻して自分を睨む私を威圧する。