ーーーーONE NIGHTーーーー




Side 茜




フッと意識の覚醒。


徐々に明確になる自分の意思で閉じていた目蓋を開け光を取り込もうとした。


それでも望んだほどの光は得られず暗い部屋と素肌に触れるシーツの感触だけがはっきりと存在を示す。


一瞬はそのぬくもりと感触に溺れ再度目蓋を閉じて、でもすぐに足りないぬくもりに気が付き目蓋を開けるより一瞬早くその身を起こした。


薄暗くても部屋の様子は分かる。


自分のマンションの寝室。


起き上がったと同時に気怠い倦怠感で体が重く、視線を落とせば映るのは裸の体。


でもそんなのははっきりと記憶し理解していたことだから驚くこともなく、今はただ確かにあった筈の存在の有無にキョロキョロと視線を走らせてしまった。



「・・・・千麻・・ちゃん?」



呼んでも返される声もなく虚しく消えていく自分の声に、何故か焦燥感に満ちてぬくもりばかり残されたベッドを抜けた。


床に落ちていた服を拾い上げ身に着けると、逆に体がヒヤリとして鳥肌が立って。


それでも、どうでもいい。と部屋を出ようとして扉に手をかけ、出る直前に時計に視線を走らせる。


23時48分


ちらりと確認した時間でまだ日付も変わっていないと理解。


そのまま求める姿を探して部屋を出てリビングに足を延ばしてもその部屋も薄暗い。


でも、寝室よりはわずかに明るい。


ルームライト。


それを確認すればわずかに焦った感情は薄れ、落ち着いてリビングを見渡しその姿の不在を理解すると自ずと答えを得て部屋を突き進む。


ベランダに通じるガラス窓。


それに手をかけ静かに開ければふわりと夜風が入り込んで髪が揺れる。


一瞬その風に癒されて、すぐにその姿をようやく捉えた。




「・・・・狡い」


「・・・・朝まで就寝かと思いました」




ベランダに寄りかかってロックグラス片手に月見酒をしていた姿が、窓の開閉音でゆっくり振り返ると俺を捉えてあっさり一言。


その姿に焦りとか羞恥とか動揺は全くの皆無。


何の変化もない、当たり前の日々の再来のようで、一瞬数時間前の大きな異変である熱情激しい時間は夢だったのかと思ったほど。



「・・・・飲みますか?」


「んっ?あ、・・・お酒?」


「あれだけ有酸素運動すれば喉も乾くでしょう?」


「・・フッ・・・ははっ・・有酸素運動?千麻ちゃんらしい・・・」



どうやら俺の痛い妄想交じりの夢でなかったと彼女の発言で明確になると、安心と同時にわずかに緊張。