スッと離れたそれに若干の名残惜しさ。


でもすぐにでも触れそうな位置で留まると、そんな名残惜しささえ相殺する響き。




「・・・・・・・茜・・・」




鳥肌が立つ。


耳に反響する。


凛とした聞きなれた筈の声にひたすら恋して熱が上がった。




「追記は・・・・狡いけど・・・、

この時間は酷く気持ちよくて癖になるから受理してあげる・・・」


「・・・・・一瞬でも愛してくれる?」




落とされた言葉に確認を入れれば、近すぎて見えにくい口元が微笑んだのに気が付く。


その目の細め方で。




「・・・・好意の無い相手とこんなことする程軽い女じゃないですよ?」


「フッ・・・・・狡いよ・・・千麻ちゃん」




困ったように眉尻下げて笑えば、クスリと笑った彼女が本当に軽く唇を重ねて離してまたその響きを口にする。




「茜・・・」


「・・・・」


「こう呼べば・・・・その証明になるのでしょう?」


「狡いね・・・・」


「あなたが追加した条件でしょう?」




名前を呼ぶ事に愛をかけて。


その一瞬だけは・・・・。



馬鹿な契約追記が受理されれば、ゆるゆるとその時間に戻るべく彼女が快楽に身を沈める。


勿論俺も。


再開すればまたその巧みさとの我慢比べ。


思わず顔を歪めるほど堪えるのに必死なのに、快楽を増すほど魅力を強める彼女の邪魔をしたくない。


むしろ・・・どこまで高まるのか見てみたいと思ってしまう。


自分の快楽の後回し。




「・・・あっ・・・んんっ・・・・・」




また一つ・・・・



増す・・・。



魅力と愛おしさ。




「ーーーーーーーーっ・・茜・・・・・」




あっ・・・・。




「・・っーーーヤバッーーーーーーんっーーーーーーー」




この感じ・・・・・。


快感・・・・。


物凄く久しぶりで気持ちいいけど・・・。


不覚。


思いっきり彼女の扇情的な姿に酔いしれて一瞬気を抜いてそれをかわせなかった。


彼女の快楽に引きずられて、咄嗟に意識しても完全に手遅れ。


思わず彼女の腕を掴んで息を止めるように欲を逃してしまえば、何となく気まずい事後の沈黙。


落としている視線を上げにくい。


ってか・・・無言の千麻ちゃんかなり怖いし。


むしろ・・・・・避妊してなくてすみません。