「先生、お疲れさまです」






と言うと、先生が目を丸くして、






「生徒にそんなん言われたの初めて!」






と噴き出して、私の頭にぽん、と手を乗せました。





私は、先生に頭を撫でられると、いつも嬉しくなります。





でも、そのときは、………違いました。





いつもの嬉しさと同時に、なんと言えばいいのか………切ないような気持ちが、やってきました。





先生が何気なく発した『生徒』という言葉が、胸に突き刺さって、ずきりと痛んだのです。





私はそんな気持ちを隠すように朝食の片付けをして、






「………じゃあ、私、行きます」






と言って立ち上がりました。




先生は、






「おう、また後でな。気をつけて行けよ」






と手を振りながら見送ってくれました。





私は言葉にならない気持ちを抱えたまま、駅に向かいました。