「あの、課題の、チェック表……」





「あっ、そっか、そうだったな。わざわざありがとな」







先生はにっこりと笑って私にチェック表を渡すと、私の頭にぽん、と手を載せました。







「じゃ、よろしくな」







そうして、ひらひらと手を振りながら、本館へと帰って行きました。






そのあとしばらく、私は渡り廊下の真ん中にたたずんでいました。





先生と喋ったのは、これが初めてでした。





一年生の頃からずっと、数学の担当は藤森先生だったけれど、会話をしたことがなかったのです。






私は、今日の日付を、胸のなかの日記帳に、くっきりと書きつけました。