* 「…………えっ、い、いまなんて?」 課長がぽかんとしてあたしを見下ろしている。 鳩が豆鉄砲をくらったような、という表現がぴったりの顔だ。 「まだ行かないでください。 もう少し、ここにいてください」 あたしはもう一度、確かめるように、噛みしめるように言った。 課長は「うん………」と呟くように言って、すとんと腰を下ろす。 いつも喋ってばかりの課長が、ぼうっと気の抜けた表情で、ぼんやりあたしを見つめていた。 あたしはすうっと息を吸い込んで、呼吸を整えてから、ゆっくり口を開いた。