恋湖side


「えっ…」


高校2年の春。
衝撃的事実を知った。







--数時間前


高校2年の新学期が始まる3日前の午後。
兄の祐輔ことゆう兄から「話があるんだ」と言われた。
私とゆう兄は小さい頃に親を亡くしてしまって、そこからずっと2人で協力しながら頑張ってきた。
ゆう兄は私より七つも年上で、ばりばり働く社会人。
学費やら生活費やら全部ゆう兄に払ってもらっている。
ゆう兄はすごく優しくて、とても頼りになる人。
だから昔から大好きだった。
でも…兄としてじゃない。
1人の男の人として。
だけど血が繋がっている家族だから、ずっとこの気持ちを隠して生きてきた。
そんな私にとって一番大切なゆう兄が…とんでもないことを言った。


「恋湖、紹介するよ」

「へ?」


ゆう兄の隣にいるのは、とても綺麗な女性。
ゆう兄と同じくらいか、少し下くらいの人。
嫌な予感がした。


「俺達さ」

「あ!わざわざ来てくれてありがとうございます!
お茶淹れますね!」


ゆう兄の言葉を遮るように、私は席を立って台所へ向かった。
嫌な心臓の鼓動。
真剣なゆう兄の眼差し。
次の言葉を聞くのが怖くてしかたなかった。

ダメだ…普通にしてなくちゃ。

なんとか笑顔を保ちつつ、お茶を持って席へ戻った。


「わざわざありがとうございます」


ニコッと笑う彼女は、すごく優しそうな柔らかい笑顔だった。


「今日恋湖に時間作って欲しいって言ったのは、鈴を紹介するためなんだ」

「はじめまして、恋湖ちゃんでいいのかな?
百合根鈴です」

「は、はじめまして…」


淡々と続く話。
私は頭が真っ白だった。


「それでな、恋湖。
今日は…報告することがあって」

「……」


何も言えない。
言葉が出てこない。
何を言われるかだいたい予測できたから。


「俺達…結婚前提に付き合ってるんだ」

「えっ…」


衝撃的事実。
そりゃ、こんなに優しくてカッコイイゆう兄なら彼女がいたっておかしくない。
でも信じたくなかった。


「これから時々家に鈴が来たりすることも多くなると思うから、仲良くしてやってな」

「いきなりでごめんね、恋湖ちゃん。
よろしくお願いします」

「……」


意味わかんない。
なんで…?
今まで全然そんな素振り見せなかったじゃん。
どうして…

そんなことを考えていたら、身体が勝手に動いた。


「恋湖!?」








--


「はぁ…はぁ…」


気づいたら家を飛び出して、少し離れた公園に来ていた。

ゆう兄に彼女がいたことも知らなかったし、しかも結婚前提って…
あの人と結婚しちゃうってこと?
ゆう兄が私のじゃなくなっちゃうってこと…?

勝手に溢れる涙。
でも私達は兄妹。
止める資格なんて私にはない。
逆に応援しなくちゃいけない立場。

なのに…

ひどく痛む胸。
これほどゆう兄が好きなことに今自覚した。


「ゆう兄…!」


それからその公園で、一時間以上泣き続けた。