低すぎなくて、よく通る、心地良い声。
一岡くんの声なんてあまりよく知らないのに、彼だと思った。
だって、千葉さんっていうのは、私だから。
このタイミングで私を呼ぶなんて、きっと彼しかいない。
……でも、何でこの距離で私だって分かったの?
もしかして、見てることずっと前からバレてた?
だとしたら、最悪だ。
絶対誤解されてるよ……。
恐る恐る窓の近くに戻って、視線を外に戻す。
やっぱりそこには、水色のTシャツを着た一岡くんが、真っ直ぐにこっちを見ていた。
一年の時はクラスが違った一岡くんと話したことなんて、ない。
これから先もないと思ってた。
別に話してみたいなんて思ったこともなかった。
ただこの退屈な時間を埋めてくれる、それだけの存在。
今までも、これからも、そのつもりだった。
なのに、初めて同じ世界で生きてるような感覚に陥って、何だか落ち着かない。
「俺の机の引き出しの中に、タオル、入ってませんかー!?」