でもいないって言えばそれ以上話が膨らむこともないのかな?
そしたら三島くんはどこか行ってくれるかな?
「……えっと、」
「ーーおいこら、鳴!!」
その可能性にかけようと口を開いた瞬間、少し怒ったような声が教室に響いた。
鳴というのは、三島くんで。
現に目の前の彼は悪戯がバレた子供のような顔をして笑っている。
彼の肩越しに少しだけ目を細めて、眉間にシワを寄せた一岡くんが見えた。
朝練があったからかな?
ジャケットを羽織らずにシャツ一枚で右肩に青いタオルを掛けている。
やっぱり水色とか、青とか、そういう色が好きなんだろうなって思うとおかしかった。
「遅かったやん、疾風」
「朝練終わってダッシュで消えたけ、何か用事があるんかなっち思ったら、お前なー!」
後ろから首に手を回して一岡くんは少し怒ったような声でそう言った。
だけどそんなの三島くんに何の効力もないみたいで、やめろよ疾風なんて言って、やっぱり笑っている。