名前を聞いたところで、そう言えばそうだったとすら思わない。

そうなんだって程度。


もう無視してしまおうかと思ったけど、もしそうして昨日の一岡くんみたいに傷付いた顔をされたら面倒だから、適当に笑顔を作ってみせる。



「身長162cm。好きな食べ物はハンバーグで、嫌いな食べ物はトマトやね。あ、部活は陸上部」




だけどそれがいけなかったのか、興味のない細かいプロフィールが彼の口から次々に飛び出す。

てかこの人も、陸上部だったんだ。


一年の頃から見てたのに、気づかなかった。




「でさ、突然なんやけど、千葉さんって彼氏おるん?」




本当に、突然すぎる。

どうしてそんなこと私に聞くんだろう。


何を思ってそんな質問するんだろうって考えてみるけど、無邪気に微笑む三島くんは何も考えてなさそうで困る。

こういう人にとって、挨拶程度のものなの?


分からないし、どうしたら良いか分からない。

いないなんて真面目に答えるのも何だか嫌でモヤっとする。