「……お、おはよ」




一刻も早く返事をしてこの空気を逃れようと、彼には聞こえるくらいの声で挨拶をした。


その瞬間、ぱあっと花が咲いたように明るくなる表情。


たったそれだけで、苦手なタイプだと思った。

夢や希望に満ち溢れてて、みんな友達だなんて思ってそうなほど社交的で、平等に優しさを与えられる、私と真逆の人間。


側にいるだけで、悲しくて、虚しくて、やるせなくなる。




「ねえ、俺の名前知っとる?」




何で新学期初日でもないのに、私は突然絡まれてるんだろう。

挨拶をすれば去ってくれると思ったのに彼は右隣の席に勝手に座って話を続ける。


……知らないとか、そんなこと言えるわけないと思わない?


頬杖をつきながらニコニコと話す姿に、思わず零れそうになる溜め息をぐっと堪える。




「ははっ、そんな明らさまに嫌そうな顔せんでよ。俺は、三島 鳴(みしま なる)」