「……あ、起きた?」
ゆっくりと目を開けると、夢か現実かはっきりしない視界の中で、そう言って礼央は優しく笑った。
私たちは同じ部屋で、同じベッドで眠る。
……違う。そうじゃなきゃ、私が寝れないの。
お母さんがいなくなった日から夜が怖くなった。
機嫌が悪くベロベロに酔った父親が、帰ってくるなり私の部屋に乗り込んで、暴れまわるからだ。
一人で暗闇にいるだけで体が震える。
「おはよ、葵」
「……はよ、礼央」
何度、この優しさに救われただろう。
何度、この笑顔に安心しただろう。
ちゃんと一人で歩けるようになるから。
礼央に頼らなくても生きていけるようになってみせるから。
「今日の体育サッカーやけん、晴れたら良いなぁ」
「礼央は本当に昔からサッカーが好きやね」
だから、それまで、私のそばで生きて。
お願いだから、私を一人にしないで。