あの男は、私がいようといまいと、どうでもいいんだ。

そんなんだから、お母さんに捨てられるんだよ。



ーー『お金なんかよりずっと大切なことがあるって、貴方のおかげで気付けたわ』


そうメモに残して中学二年の冬、お母さんは家を出て行った。


私一人を、あんな男のところに残して。


雪の舞う、人生で初めてのホワイトクリスマスだった。

それなのにサンタさんは、プレゼントどころか、私からお母さんを奪った。


例えあの男と生きていけなくたって、私のことは連れて行って欲しかった。

やっぱり、嫌いな男の血が流れる私は、必要なかった?


気に入らないことがあると、浴びるように酒を飲んで、感情のままに殴って、怒鳴り散らす。

そんな男との子供の私なんて、顔すら見たくなかった?


そうだよね。

出て行く二年前には不倫し始めていたお母さんは、その男のところに行ったんだもん。

私なんていらないよね、邪魔だよね。



でもさ、お母さん。

……一度はそんな男を愛したお母さんが耐えられなかったのに、そんな人と二人で暮らすなんて、私が耐えられると思った?