「弁当、取りに行ってきます！」

私と塚本さんは、一緒に事務所を出る感じになった。「寒くなったね～」なんて会話しながら、これって、チャンスじゃない!?
と思った。

どうきりだすか、塚本さんの言葉に、どう返すか？何通りか考えて、頭の中で、何度もシミュレーションをした。

大丈夫！落ち着いて・・・

外に出て少し歩いた所で、声をかける。

「塚本さん！」

「ん？」

塚本さんが、私を見下ろす。よしっ！上目遣いで塚本さんを見ながら「フフッ」と、悪戯っぽく笑う。

「この前の飲み会の時、塚本さん、私に何かしたでしょ？」

「えっ!?」と塚本さんは目を見開き、立ち止まってしまう。

あれ？・・・塚本さんから２歩ほど歩いて、私も立ち止まる。

「・・・覚えてたんだ」

塚本さんの静かな言葉に、私も、ついシミュレーションしていた言葉を忘れ、本当の事を言ってしまう。

「前後の記憶は、飛び飛びなんですけど、その事は、なぜかはっきり覚えてて・・・」

塚本さんは空を見上げた後、自嘲気味に笑ったように見えた。