心臓が──どくんと脈打った。



「だ!」

「お、智也!いい子にしてたかー」



一歩一歩、近付いてくる声。

一瞬にして脳裏に蘇った過去の記憶。

私、この声知ってる。

“前田”、──その名前も。



「遅くなってすみませんー」



明かりに照らされ、はっきりと見えたその人の顔は。



「りゅう、たろ……」



今でも偶に夢に見る。

──泣いていた君と、強がった私。



「もしかして……峰……?」



スーツ姿のその人の目は大きく見開かれている。

恐らく私も同じような顔をしているんだろう。