「知沙は人懐っこくて、あたしなんか何もできずに、まかせっきりで。情けないよ…」

知沙はいきなりあたしの肩をガッと掴んだ。


「自分が動かないと何も始まらないよ!もっと自信持ちなよ!杏は素直で、かわいいんだから!まったくもう!」

知沙が怒った。

知沙は高校からの友達でこんなに怒ったのは初めて見た。


「それに…」
話を続ける知沙。


「柏さん、ずっと杏の様子うかがってたよ?」



え…。
まだ一回しかあったことないのに。

「そ、そうなの?」

「杏さ、」

知沙が微笑む。

「杏は好きになったんだよ柏さんを」




胸の奥がまたぎゅーっと苦しくなった。

夕方のオレンジ色の空が風を運ぶ。

そうなんだ、
あたしは初めて会った時から。

柏さんを好きになってたんだ。



一目惚れってやつなのかな。