「おい、葉月。」

「ヒャアアアッ⁉︎」

丁度、今話していた人物の声が後ろから聞こえて思わず飛び上がった。

恐る恐る後ろを振り向くと眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔の海斗とその腕にピッタリくっ付いた立花さんがいた。

「何驚いてんだよ。」

「いっ、今の話聞いた…?」

ニヤニヤとこっちを見るれもんから目を逸らし問いかける。

「はあ⁉︎知らねえし。ってかお前歴史の資料集持ってきたか?」

歴史の資料集……

「ああああああああっ‼︎」



立花さんがあからさまにイライラしている。


「へへ。忘れちゃった。」

気にせず軽くヘラヘラと笑いながら海斗の方を見ると訳も分からず海斗は怒り出した。


「はあ⁉︎お前も忘れたのかよ‼︎歴史の先生めっちゃ怖いだろーがっ‼︎」


「何その言い方‼︎まさかあんたも忘れたの?」


「あーそうだよ。お前に見せてもらおうと思ってたのに。」


「何それ⁉︎私はあんたの下僕かよ⁉︎」


「え、知らなかったのか?」


「はあ…?」


「なんだよ…?」


火花を散らしそうな勢いでバチバチとにらみ合う私たち。


さっき好きって認めたとこなのに‼︎


「はい、ストップストップ。」


その間に冷静な顔をした珠璃が入ってきた。


「喧嘩はやめなよお。でも喧嘩するほど仲がいいって言うしい〜仲良い証拠なのかなあ?ねえ立花ちゃん。」


「はあ⁉︎知らないしっ‼︎海斗君♪私が別のクラスの友達に借りてきてあげる‼︎」


その言葉を聞いて私も借りに行こうかなと、ノロノロと歩き出すと、私の首に海斗の腕が巻き付けられている。


ゆっくり後ろを見ると、キモチワルイ笑顔を浮かべた海斗。


「いーよ。葉月が借りに行ってくれるから。」


「はーあっ⁉︎なんで…っ‼︎」


反論しようとした私の言葉を海斗は遮る。


「お前が酔った時そばで看病してやってたのは誰かなあ?」


「うううう…。」


天使のような微笑みを浮かべる海斗。
目をキラキラと輝かせているれもん。
今にも泣きそうな顔をしている立花さん。
無表情の珠璃。

唸り声もだんだん小さくなり最後にぽつんと呟いた。

「借りてきます…。」