「ん？」


そう言って女の子は振り向いてその目に私を映した。


「私、桜武のマネージャーなんですけど、ファイルを預かってもらってたみたいで、ありがとうございます。」


そう早口で話して、その子の左手に握られたよく見慣れたファイルを受け取ろうと手を出すと。


「あなたが葉月ちゃん！？！？」


その子はいきなり私の手を握ってピョンピョンと飛び跳ねた。


「誰だよ？」

訝しげに私を見てそう言う隣の男の子。


いや、それ私の台詞だし。


凄いスピードで上げ下げされる自身の手を見つめながら誰だろうか考える。


「わーっ！ずっと会いたかったんだよお！
ほら！あの葉月ちゃんだよ！海斗の！」


ニコニコと笑いながら男の子に私を紹介するマネージャーさん。


「ああっ！あの『葉月』な！」


状況が飲み込めない私を置き去って男の子も勝手に人の名前を呼び捨てにして盛り上がる。


あー、もう苛立ってきたんだけど。


動揺が限界に達した私は女の子の手をパシッと払うと鋭く睨みつけた。


「あんたたちが誰だかは知らないけど、勝手に人の名前呼び捨てにしないでくれる？」


そう言って反応を見ると、2人はにっこりと笑いあった。