「てか、今日のメニュー何?」



隣で準備する蓮に問いかける。


「あー、もうちょっとしたら咲絢がくるから待っとけ」


「はあーい」


聞きなれない名前に首を傾げて海斗は私に耳打ちしてきた。


「誰?」


「もうちょっとしたらくるよ。多分」


そう呟いた瞬間、仕組んでいたのかと言いたくなるくらいのタイミングでドアノブが回された。


「あら?1年生の方?」



優雅にふんわりと問いかけてくる彼女こそが天然すぎる美少女と名高い、この学校のアイドル。



サッカー部の3年生マネージャー、秋元咲絢(アキモト サアヤ)さん。



「咲絢。お前アホか。一年生入学してねえし、特待の奴らは全員結構前から練習にきてんだろ」



「やっぱりそうよね。変だなと思ったわ」


「ははっ…。」


苦笑しながら、ポカーンとしている海斗の方を向いた。


「こちらがその《咲絢》。
秋元咲絢さん。
3年生のマネージャーだよ」



「変人すぎてやばい!」



嫌味のように蓮が付け加えてきた。


「始めまして。
マネージャーをしている秋元咲絢といいます。
えっと…?」



「あっ…森田海斗っす。
蓮先輩と葉月とは同じ中学で、しばらく違うところに住んでいたんですけど、また帰ってきて、2年生です。
サッカー部に入るつもりっす」



「海斗くんね?よろしく」



お嬢様スマイルを見せる咲絢さん。



実は、咲絢さんは私の家なんて相手にならないレベルの大金持ちのお嬢様。



決して甘やかしたりしないお父さんが社会勉強の一貫で部活に入部させたらしい。



それでも頭は良くて、要領もいいから、頼りになる先輩マネージャーなんだ。



「咲絢さん!こいつサッカーだけは異常に上手いんですよ」



私がそう話すと、咲絢さんは腕を組んで頷きながら話す。


「そんな顔してると思ったのよ」


「どーゆー顔だよ」


真剣な顔の咲絢さんに蓮が鋭く突っ込みをいれる。



この2人は漫才コンビ組んで食っていけそうなくらい面白い。



優しい蓮もなぜか咲絢さんにだけは口調が荒いんだよね。



私は逆にそれが愛情表現なんだと思っているけど。



「ほら、あのブラジル選手みたいな、スペイン選手みたいな。
なんか野性的というか、中世的というか。
ねえ?葉月ちゃん?」



「あー…はは」



「いや。わけわかんねえし。
お前本当アホだな」



「蓮さん、何なの?あなた宇宙人に改造でもされた?」



「されてねえから心配すんな」



「心配はしてません。自意識過剰な考えはやめてください」



「はいはい」



「ああ、葉月ちゃん、準備しましょう」



「いきなり話変えんな!」



咲絢さんと蓮のいつもの掛け合いに苦笑いしながら頭を縦に振った。



「はい」