ただボーッと真正面を見つめていた。



“何か”を見つめていた。

ここにはない“何か”。

手に入れたくても届かない“何か”。


瞬き一つしないで座り込む私の前で蓮が座り込んで目線を合わせてきた。

オドオドと目を合わせないようにそらし続ける。


ポンッ


何一つ言葉を発することなく、蓮は私の頭に手を置いた。

それは暖かかった。