「ねえ、海斗…明日は1日練習だよ?」


「少しだけ抜ける」


「大会前なのに?みんなに怒られるよ」


「ちゃんと説明しとく。心配すんな」


「心配なんかしてないし」


帰り道、行きは清々しくて堪らなかったその風が、ねっとりと気持ち悪くて。


風の種類が変わっちゃったのかなあ?

なんかさ、風って気分で変わるよね。

嫌に感じたり、
清々しく感じたり。

まるで、人間のようだ。



結局自分が大事なんだよね。


失った大きな宝物をそのまま諦めることなんて、欲深い人間には到底不可能なんだ。


あーあ。

上手くいっている気がしてたのになあ。

中学の時と一緒か。

こんな風になってしまうなら海斗と再会しなければよかった。




会話は途切れ、学校に着くまで一切お互い口を開かなかった。


本当は聞きたいことが一杯ある。

舞友とヨリ戻すの?

とか

結局見た目が大事なの?

とか。

でも無理だ。