私はやっぱり海斗が好き。

今度こそ振り向いて欲しいし、諦めたくなんかない。

だけど、きっと好きな人がいるって言って断ればきっと雄也は傷つく。

私はその気持ち嫌なほどわかるから。

だからできればそういうのは軽くスルーして断りたいんだ。

スクールバッグを肩に掛け、俯いたまま考え込む。

キャッキャッ笑いあう女子や、
ふざけ合う男子の間をすり抜け1人、部室へと続く道を歩く。

すると、今の私の心模様とはかけ離れた高さのテンションで話す声が耳に飛び込んできた。

「海斗君っ‼︎今日、私練習見に行くからねっ‼︎」

「あー。サンキュー。」

「これ、家庭科の時間作ったんですけど、貰ってくれませんか⁉︎」

「うわ。美味しそー。ありがとね。」

「あの…。海斗先輩…。これあのブランドのタオルなんです。もらって頂けませんか?」

「え?これすげー高くね?貰っていいの?」

「はい‼︎海斗先輩に貰って欲しいんです‼︎」

「まじか…。じゃあ遠慮なく使わせてもらうな‼︎サンキュ。」

「海斗君‼︎こんな子たちに構わないで早く行こうよ‼︎」


海斗に目をハートにして群がる少女たち。

その子たちに目をギラギラと光らせて海斗の腕を離さない立花さん。

「はー…。」

自然とため息が溢れる。

なんかこっち系ではもうボロ負けだな。

昔は安定のモテ方だったのに。


何てことだ‼︎