やっと、逢えた。
 愛おしい、焦がれた相手。


「ゆ、き」


 次の瞬間には、私は身体ごと、彼の腕の中ーー。


「皇」

「雪姫……雪姫」


 いつも悪態ばかりつく、皇が。
 ニヤリと笑って私を翻弄する彼が。

 ただただ、私の名前だけを繰り返し呼んで。
 その声に混じる震えに、気付いてしまった。
 彼が私をきつく抱き締めるから、顔も上げられずにただ、強く強く力のこもる腕に涙が溢れた。


「皇」


 私の言葉に、彼は私を見つめて。


 最初に言う言葉は、もう決めてある。
 その瞳に、囁いた。



「今すぐ、キスして」



 言い終わる前に重ねられた唇に、また涙が零れて。



「“そしてお姫様は、王子様のキスで息を吹き返しました”」


 桜里の優しい声が、私と皇に掛けられた。