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……なにが、起こってるの?


 私は自分の目を疑った。
 目の前には、血塗れでへたり込む私を誘拐した男と、その頭に拳銃を突きつけている、皇。


……拳銃?

 けんじゅう???


「ストーップううう!!!ストップううう!!皇!!何やってるのおおおっ!?」


 がばっと起き上がって、私は叫ぶ。

 なんで拳銃!?いや、なんか異常なほど似合うけど!!異常に非常に格好良いけど、それどころじゃない!!


「銃刀法違反んん!!!」


 叫んだ私に駆け寄った桜里が私を抱き締める。

「雪姫!」

「犯人はてめえかあああ!!」

 私は愛する父を殴り倒した。
 あんな物騒なもんを持ち込んだのは彼に違いない!

「雪姫、パパになんて事を。まあ無事で良かった」

 立ち直りの早い桜里は私の責めなんてスルーして、もう一度抱き締めた。見れば真野社長も安堵したように息を吐く。


 あ、あれ?どうして、桜里がここに?彼の護衛も、真野社長も。

 そこでやっと、自分の状況に気づいた。



「雪姫」



 私を呼んだその声はひどく心もとなくて。向けられた瞳は、恐怖を色濃く残したままで。私は言葉を失う。
 こちらを見つめる彼が、ふらりと私に近づいた。桜里を押しのけて、その手が私に伸びる。
 けれど桜里もただ微笑んだだけだった。


ーーああ、私。助かったんだ。

 そんな言葉がふと浮かんで。
 視界は温かい腕に遮られた。