「ーーっめえーーっ……!!!」

 怒りで、言葉にならない。

 気がつけば俺は、そいつに飛びかかっていた。



ーーコロシテヤルーー


 ただそれだけに、支配された頭で。

 何発殴ったのか、分からない。呻くそいつを前に、俺の手は血塗れで。
 それでも俺がもう一度拳を振り上げると、真野が俺を後ろから羽交い締めにする。

「城ノ内!これ以上は駄目だ!お前、人殺しになる気か!?」

「放せ」

 そのくらいなんだ。
 雪姫が居なかったら、何の意味も無い。


「放せっーー!」



 真野を振り払って、同じく俺を押さえようとした白鳥の上着に手を突っ込んだ。

「城ノ内君っ」

 白鳥が制止しようとするが、先に俺の手は硬い感触を掴み上げる。予想通りのものが、あった。
 それを引き抜いて、血だらけで震える男の頭に押し付ける。

「ヒイッッ!」


 男は恐怖に顔を引きつらせた。
 そんな顔だけじゃ、満足できない。


 雪姫はどんな思いをした?どれくらい泣いた?

 想像しただけで苦しくて、息が詰まる。
 誰かにこんなにも明確に、殺意を覚えたことはない。

 カチャリ、と響いた音は思ったよりも大きく、重く。
 俺は引き金に掛けた指に、力を込めた。


 もう、全部壊れればいいーー。



「死ねよ」



 そのとき。




「……皇?」




 細くて透明な声が俺を止めた。