一瞬の沈黙と。ふ、と笑いを含んだ溜息。


『……だから僕は君のことが嫌いなんですよ』


 白鳥はそんなセリフを口にして。
 真野が深く微笑んだのを目の端に捉えた。

『いつだって君は、雪姫を振り回しているくせに。彼女の為となるとプライドも捨てる』

「あんたの娘も、そうするだろ」

 俺の言葉に、白鳥はいくらか棘の抜けた声で呟いた。

『君はどこまでもムカつく男だね』

 遠回しな、了承を得て。俺はアクセルを踏み込んだ。



***

 住所から辿り着いたのはごく普通の単身者用のマンション。
 水瀬の友人は、管理人にまで話を通してくれたようで、俺達の素性を問う事もせずに慌てた様子で鍵を開けてくれた。

 なだれ込むように、室内へと入って。


「雪姫ッ!」



 そして、俺の見たものは。