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 ナナミちゃん達のデビューイベントライブの日。


 招待席にはちゃんと、ナナミちゃんのご両親とお兄さんが座っていた。
 あれから少しずつ、ナナミちゃんと家族の間には会話が増えて、時には彼女が出た番組を一緒に観てくれるのだという。
 少しずつだけど、良い方向に向かえば良いな。

 本番が終わった後、ナナミちゃんのお兄さんが私のところへ来て、

「あの、これからも妹を宜しくお願いします」

と言ってくれたのが嬉しくて。


「任せて下さい」

と微笑んだら、彼がガシッと私の両手を握りしめた。

 あ、あれ?

 なんだか妙な熱視線に首を傾げる私。
 お兄さんは頬を赤く染めながら、勢い込んで言う。

「あの!もし良ければ今度お食事でも」

「それに手を出すなら損害賠償どころじゃ済まないが?」

 冷酷そのものの声音で彼から私の手を取り返すのは、不機嫌そうな城ノ内副社長。

「え、彼女は芸能人じゃなくてマネージャーなんでしょ?」

 お兄さんが焦ったように副社長を見る。
 彼は顎を上げて言い放った。

「お生憎。それは、うちの最終秘密兵器でな。ついでに俺の私物だ。いくら積まれても誰にもやれねぇな」

 なんなの、この人達は。

 やや涙目加減のお兄さんに若干の同情を交えつつも。

「ずるいですよ、あんた!」

「あ?外出るか?」

 まったく、何なんだ。

 私は呆れてその場を離れる。