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 病院から家に戻って、桜里はワンピースを試着した私をさんざん綺麗可愛いと褒めちぎり、ついに仕事だと秘書に連れ戻された。
 穏やかだけど強烈な嵐が去って、私は一日ぶりなのに懐かしい我が家を見回す。
 なんだか色々あり過ぎて、ここで普通に暮らしていたのが、遠い昔のことみたい。
 
 と、皇がワンピースを着たままの私を眺めて、溜息。その様子に私は問う。

「え、似合わない?」

「似合う。あいつが言った通り、お前の為に作ったんだろ」

 皇の視線はじっと私を見ていて、その言葉が嘘ではないと分かった。

 お、意外。素直に褒められると、こっちが照れてしまう。 
 なんて油断したなら。


「だけどいつまでも、他の男から贈られた服なんて着てんじゃねぇよ」

 彼は私を引き寄せて抱き締めると、背中のファスナーを引き下ろした。
 その早業に慌てながら、私は皇に抗議する。

「父親ですよ、何無茶言ってるんですかっ。子供の頃なんて、ほぼ全て桜里に服を買ってもらってますよ!」

 なんか違う、絶対違う!

 皇はふん、と鼻を鳴らしてから、

「あ、待てよ」

 何か思いついたようにニヤリと笑って、私の服を脱がす手を止めた。

 い、嫌な予感。

 皇は半分空いたままのファスナーから手を這わせて、私の背中を撫でる。

「あいつに貰った服で、俺に抱かれるってのはどうだ?白鳥め、ざまあみろ」

「き、鬼畜……!変態!このサド!」


 そのまま彼はワンピースの裾を捲り上げて、私の脚を抱え込んだ。
 笑いながら耳元で囁く。


「そんな俺が、好きなくせに」


 だめだ、こりゃ。

ーー何が駄目って、皇の言葉を否定出来ない私が、なのだけど。