「……や、皇」

 一瞬だけ、包帯を巻かれた手首に触れられたことに身を硬くすれば、皇はそこにキスを落とした。


「ここも、触られたのか」


 またひとつ、またひとつ。

「なあ、こっちは?」

 彼の唇が私のあちこちに降って来て。

「ここも?」

 ひどく優しいそれに、戸惑った。


「こ、う……?」

「ああ、駄目だな。もう限界」

 皇がそう呟くと、開いた服の中の私の素肌に吸い付いて、強く強く痕を残す。


「もう誰にも触らせねぇからな。俺のものだ。この唇も、手も、足も、ーー心も全部」


 傲慢なセリフなのに、皇が切なげに笑うから。私も彼へ手を延ばした。
 やっと、力を抜いて笑える自分に気づく。


「そうですよ。あなたのもの」


 私の答えに満足したのか、優しい瞳に、少しだけいつもの色を浮かべて。彼は私を見下ろした。

「全部、上書きしてやる。あいつに触れられた場所なんて全部、俺の感触に変えてやる」

 そう言ってまた、キスを繰り返す。

「こ、う、そんなとこ、触られてな……」

「黙ってろ」

 肌を辿る指に、落とされるキスに、もう皇の事しか考えられず。
 私は彼の首にしがみついた。