【短】壁ドン シミュレーション




温度が上昇する。


鼓動が高鳴る。



彼の瞳は真剣そのもので、揺らぐことなく。


私を真っ直ぐに見つめ、


貫いた。




「……あの、本当に、今さらね」



言葉が見つからなくて、顔を背けてそんなことを言う。



だって今更付き合うって、もうどこかの夫婦以上の時間をともに付き合ってきた。


今更わざわざ、付き合うだなんて言葉は、なんだか変。




「紗奈は?」



…でも。



彼は確信犯だった。私の瞳を今度は、面白げに見つめていて。


試されているようだった。




「……好き、だけど?」


「だけど?」



幼馴染に、こうも無理やり意識を持っていかれると、ドキドキせざるを得ない。



彼のこれまでの素っ気ない態度は、まさか、ツンデレの“ツン”というやつ?



…なんだか可愛く見えてきた。






「なんかね、まだ弟みたい」


「それを言うならお前の方が妹だろ」


「私が世話してるじゃない」



「…まぁ、俺はお前のことを、そんな風に思ったことはないけどな」



彼がまた、真剣に私を見た。


背が伸びて、私はソファーの上に正座した。




「…じゃあ、これからもっと、じっくり考えてもいいですか?」


「なに、考える時間が必要なわけ?」


「うーん、突然すぎて、なんかよくわからない」


「ふぅん」



不服げな顔。



コイツのこと、恋愛対象として見たこともあった。


男として、見ていた日もかなりあった。


でも綾は、私を見てくれなかった。


その間に切り離そうとした感情…でも、それも切り離せていなかったようだ。



だから多分私は、綾が好き。






「…あ、なら、さっきの続きしよ」


「なに?」


「さっき、聞こうと思ってたの。私、同意する。壁ドン」


「ああ、その話か。で、なにして欲しいわけ?」



「……ためしてみてよ」


「ためしてみるか?」




彼が接近する。


後ろには白い壁。


彼との距離は数センチ。




心臓がうるさくて、余計に高ぶる。





「どういう意味なのか、わかってるのか?」


「――ええ、」


「煽ったのは、お前だからな?」




確認事項に同意する。


彼が近づいて、片手を壁につかれ…思った以上に強烈。



逃げ場をなくして、壁に追い詰められて、見下ろされて。





「――ん…っ」




同意の上の、壁ドン。



そして彼の――…あついキス。













Fin.







完結いたしました!


読んでくださった方、本当にありがとうございます!(´;ω;`)




実はこれ、壁ドン企画に参加しようと書いたものなんですが…



期限がもう過ぎていて、あちゃー。といった感じです。




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