月明かりだけが、自分と、家と、森を照らす。



信号から見た時には、周囲から漏れる光に照らされているかのように見えたけれど、実際森に入ると、それらが届いていないことがわかる。



いつ見ても、明かりの灯らないこの家は、自分自身の分身のように、自分の家のように、感じていた部分があった。



でも、違う。



何度も見るうちに、誰も住んでいないと確信するようになっていたけれど。



薄暗がりの中、浮かび上がるそれに目を凝らす。



小さな森の中にある、白い外壁の小さな家には、さらに小さな庭があった。



森も、家も、庭も、ここに主がいることを主張するかのように、手入れが行き届いていて、整然としている。



自転車を近くに停めて、庭に咲くかわいらしい小さな花たちを見ようとしゃがみこむ。




「…なぁんだ。あなたたちは、ひとりじゃなかったのね。」




口からこぼれ出た言葉に、自嘲の笑いをもらした。