小さくて暗い森は、周囲の住宅の明かりに包まれるように、そのシルエットを浮かばせて、ひっそりと佇んでいる。



信号が青に変わると、自然と私の足は森の方へと自転車を走らせていた。




―世界には、知らなくていいこともある。同じくらい知っていいこともある。




ーじゃぁ、私は。



知らなくていいことの方を、きっと先に知ってしまったんだろう。




遠くから見ていただけで、一度も足を踏み入れたことのない土地は、自分が思っていたよりもずっと小さく、そして静かだった。



木々の根たちが太く長く張っているせいで、あちこちの土が盛り上がっていて、自転車で走るのには不向きで。



自転車から降りて、押して歩く。



ちょうど森の中心に当たる部分に、家はあった。