そっか、と佐伯さんは眉を下げて穏やかに微笑む。




「千晶は、若いから、きっとその気持ちが大事なんだろうね。その気持ちで自分を支えているんだろうね。」




佐伯さんが、何を言わんとしているのかが、理解できなかった。




「よく考えてごらん。時間はあるから。千晶は本当に、誰かと関わることを嫌だと感じているかどうか。僕はそうじゃない答えが、その内に見つかると思う。」




そう言うと、佐伯さんは、手にぶらさげた紙袋を、私に差し出した。




「これ、今日の夕飯。帰ったらあっためて食べてね。」




下手なウィンクをして、半ば無理やり自転車のかごに押し込む。




「…色々ありがとうございます。」




心からの感謝を伝えてから、自転車に跨ると、手を振る佐伯さんに、小さく会釈してその場を離れた。