夜が明けて、12月25日の朝。
肌寒さに目が覚めた慈人はベッドからゆっくり起き上がると、隣で自分に背を向けて眠る友人の姿を見て思わず溜息を吐いた。
お互い上半身は裸で、自分の胸には無数の痕が。
けれど、不思議と後悔の念は無かった。
寧ろ逆に……。
「──け・い・ご・く・ん」
坂下の耳元に近付いて名を呼んでやると、びくりと肩が跳ねた。
「狸寝入りしてんじゃねぇよ」
「……ご、ごめん」
「いつから起きてた?」
「30分……くらい前、かなぁ」
「ふぅん。何で寝たふりしてんの」
「……や、ほら、辻村くんさ……」
「ちーかーひーと!」
「え?」
「夜は散々俺のとこ、チカ、チカって呼んでたのにもう他人行儀かよ」
「え、あ、だから、それは……」
「出すもん出してスッキリして、沸いた頭も冷めて後悔してんだろ」
「そりゃ……まぁ、色んな意味で……。辻む、ちか……ひとくんこそどうなん」
「俺も昨日は正気じゃなかったからな」
「……そっか。酔った勢いもあって、酷いことしちゃったよね。ごめん。ごめんじゃ済まないのは分かってるんだ。でも、昨日の事は、忘れて良いから」
「ほんとに、忘れていいのか?」
「……っ、その、方が……、慈人くんだって……」
「コレのことも、全部忘れていいわけ?」
坂下の手を取り、慈人は自分の胸の紅い痕をなぞらせた。