「辻村くんはさぁ、彼女いないん?」
「いないからお前と居るんじゃん」
「あぁねぇ。でもさ、モテるよね」
慈人は身長こそ170を超えているものの、肌も髪も色素が薄く、細身で可愛らしい顔立ちをしている。
学食のおばちゃんに人気があるのは構内でも有名な話だ。
本人がそれをどう思っているかはともかく、坂下は学食でしどろもどろになる慈人を見るのが好きだった。
「オバちゃんにな!」
「あははは! でさ、好きな子は?」
「一応、それくらいは」
「告白しないんかい」
くるりと坂下が動いて、ソファの座面に凭れ掛かる。
慈人の携帯がまた鳴った所為で、慈人からの返事が直ぐに返ってこない。
「なにニヤけてるん。好きな子とメールでもしてるん?」
「……っ、ばっ、ちげぇよ!」
「隠さなくてもいいじゃん。辻村くん嘘下手なんだしさ」
携帯を覗き込もうとする坂下を慈人が手で押し返すと、くたりとソファに突っ伏した。