「健也、帰るぞ」

ドアの向こうから千秋が声をかけた。

「あ、あぁ」

気が付けば夕方になっていた。
今日は夕方で終わりなのだ。

「そろそろ行かねえと」

「わかった。すぐ行く」

健也はちらっと阿月を見た。
阿月はぬいぐるみを抱きしめ、健也のことを見つめていた。

「また明日来るから、阿月」

阿月は健也のシャツの裾を握ったまま動かない。


「阿月…」