期待がない分、余計にそういう気持ちが生まれるのも、人の性として分かる。


和希はちょうどそんな年頃なわけだし。


「それなりの血筋があればそうだろうよ」


「……うん」


だけど凌牙がそう言うのも、理解する。


凌牙たち兄弟は、本来柳迅会とは無縁な人間なんだから。


「でも、和希はあれだけ凌牙を慕ってる。だから凌牙みたいになりたいんだよ」


むしろ、父親の背中というより、カッコイイ兄の背中を追いかけたいのかもしれない。


凌牙だって、和希がどれだけ自分に対して忠実なのか分かってるはず。


それが、兄へ対しての憧れから生まれてるんだということも。



「だから悩んでんだろ……っ……」


キッ…と目を剥いた凌牙に、あたしはハッとして口を噤んだ。