ー回想
悲鳴と泣き声が響き渡る。
村人「みんな逃げるぞ!」
「母さん、歩ける?」
「大丈夫よ。さあ、はやく行きましょう。」
一歩一歩、燃えさかる炎の中進む。
すると、村のみんなの前に一人の男が降りてきた。
村人「なんだ?!お前は?!」
「探し人がいてな…。火でもつければ、出てくるかと思ったんだが……」
ヒゲを触りながら、辺りを見回す。
「はずれ…だな。」
村人「ふざけるな!!!」
村人「何人死んだと思ってるんだ!!」
こいつ………
「ふん。この程度でやられるおまえらが悪い。もう少しましな人間がいてほしいものだ。」
村人「なんだと?!」
すると、母さんが小声で、
「ヤノウ…あそこの井戸の中に隠れてなさい。」
「や、やだよ……母さんも一緒に……」
「母さんは後で行くわ。さあ。」
「母さん…」
背中を押され、俺は走る。
井戸の中でずっと耐え続けた。
村人「かかれーー!!」
村人「うぉぉぉぉぉぉぉお!!!」
「ふん。ハエほどの力しかないくせに。」
その声が響いた瞬間、
村人達「うぁぁぁぁぁ!!!!」
村人「ひ、ひるむなぁぁぁぁあ!!」
村人「あぁぁぁ!!!」
俺は……無力だ。出ていきたいのに……足が、手がひるむ。
というより、死ぬのを怖がっている。
「ふはははは!!!!!ほんと、弱い連中よ。」
奥歯を噛みしめる。
「さてと、あいつもいねーし……。行くかな。」
その言葉を最後に、聞こえなくなった。
恐る恐る、井戸から顔を出すと
「……!!!!!」
一気に空気を飲み込んだ。
火と村人達の血が広がっていた。
「ぁ………ぁ……」
声にならなかった。
あの一瞬でみんな殺された。
隣の家の人も……。村長も……。よくおかずをくれたおばさんも………。
はっ。そういえば、母さんは?!
「母さんっ!!!!!!!!!母さんっ!!!!!!!!!」
火の勢いが声を包む。だが、負けじと叫び続ける。
「母さんっ!!!!!!!!!かぁ…………」
母さんは変わりはてた姿だった。
「母さんっ!!!!!!!!!起きてよ!死なないで!!!!!!!!!」
すると、母さんはかすかな息で、声で、
「ヤノウ」
と言った。