てか、こんだけの傷でめっちゃ血出てんじゃん。


「早くっ、救急車っ」


「おい。こんだけの傷でなんで」



って、俺の話全然聞いてねえし。


いいんちょーはガタガタと怯えながら涙をぽろぽろと流している。


相当怖かったんだな。


まあ、相手は通り魔で、襲われそうになったんだから無理もないよな。


でも俺のそんな考えは軽すぎた。


俺がこんなことを考えていた間にいいんちょーの恐怖は絶頂に達していた。


どう見ても正気じゃない。


「落ち着けって!」


「で、でもうで「大丈夫だから!」


いいんちょーの言葉を遮り、なんとか安心させる。


さっきまで自分が危なかったのに、もう俺の心配をしていたみたいだ。


俺はいいんちょーのほうが心配だ。


ギュッ


思わず抱きしめた。


いいんちょーがとても愛おしく思えた。