男は赤坂村の人間じゃない。
亜希とはどこで、どんな経路で知り合ったか、儂は何も知らない。
無知だと感じたその日。
力が欲しいと思った。
いつしか耳にした、昼の間だけ人間になれるという力。
今すぐ目の前の男から、亜希を奪ってやりたい……。
「この狐、本物? 大丈夫なの?」
そんなことは出来ず、儂はただジッと話をする人間の二人を見続けた。
「狐さんはね、私の友達なの。」
悔しい。
だけど亜希のその言葉で、儂は救われたのじゃ。
同じ人間ではない。
“恋人”という関係にはなれずとも、彼女の中で儂は“友達”として生きている。