「狼さんがね、力を貸して欲しいって。」
「力?」
驚いたように俺を見る崎野。
まさか俺がそんなことを言うとは思っていなかったんだろう。
「本当、なのか?」
俺は頷いて見せた。
「……珍しいこともあるもんだな。山添関係か?」
「余計な詮索はするな。」
俺が唸れば崎野は眉を下げ、少し呆れたように頷いた。
「わかった。その代わり俺も行くぞ。勲友は俺の、大事な一人娘だ。」
「あぁ、わかってる。」
言葉は通じていないはずなのに、崎野はまるで全て分かっているかのように微笑んだ。
「崎野の娘、急げ。時間がない。」
「うん。狼さん、私にできることなら何でもするからね。」
崎野と同じように、俺の体に跨がった崎野の娘。
それを合図に、俺は再び夜の町を駆け抜けた。