「……アオイ……?」





アオイは人間で、あれは狼。



そんなことはわかってるのに、私は呟いてしまった。





狼は鳴きもしなければ、唸りもしない。





ただジッと私の眼を見て、フイッと顔を反らした。





それから狼は奥に入り込んだのか、姿は見えなくなった。





「……不思議な、狼。」





小さく呟く。








この日私は山に寄らず、家に向かって歩き出した。








アオイ、雛ちゃん、遥……。



色んな人と出会った。





八年前を思い出す。





友達のいなかった私。



みんな蔑んだ眼で、私を見てきた。